🤚 第三十一段 雪のおもしろうふりたりし朝、人のがりいふべき事ありて文をやるとて、雪のことなにとも言はざりし返事に、「此の雪いかゞ見ると、一筆のたまはせぬほどのひが/\しからん人の仰せらるゝ事、きゝいるべきかは。 (ういてんぺんのよのならい)• 情なき御心にぞものし給ふらんと、いとおそろし。
5この精神科学応用の犯罪が実現されるとなれば、昨今の唯物科学応用の犯罪とは違って、殆ど絶対に検察、調査の不可能な犯罪が、世界中の到る処に出現するに相違ない事が、前以て、わかり切っているのでありますからして、とりあえず正木先生の新学説は、絶対に外部に公表されないように注意して頂かねばならぬ。
📞 (あとあしですなをかける)• 第六十六段 岡本關白殿、盛りなる紅梅の枝に鳥一雙を添へて、此の枝に附けて參らすべきよし、御鷹飼下毛野武勝に仰せられたりけるに、「花に鳥つくる術、知りさふらはず、一枝に二つつくる事も存知候はず」と申しければ、膳部に尋ねられ、人々に問はせ給ひて、又武勝に、「さらば、己が思はんやうにつけて參らせよ」と仰せられたりければ、花もなき梅の枝に、一つを付けて參らせけり。 しかしわたくしはかつて珍本を求めたことがない。
(いろけよりくいけ)• 第四十一段 五月五日、賀茂のくらべ馬を見侍りしに、車の前に雜人立ちへだてて見えざりしかば、各おりて埒の際に寄りたれど、殊に人多く立ちこみて、分け入りぬべきやうもなし。
😄 私は 拳骨 ( げんこつ )を固めて、耳の 後部 ( うしろ )の骨をコツンコツンとたたいた。 第三十六段 久しくおとづれぬ比、いかばかり恨むらんと、我がおこたり思ひ知られて、言葉なき心地するに、女のかたより、「仕丁やある、ひとり」などいひおこせたるこそ、有りがたく嬉しけれ。 第五十五段 家の作りやうは、夏をむねとすべし。
13抽斎は金を何に費やしたか。
🤞 (いんしょうしつだい)• 父 允成 ( ただしげ )が 致仕 ( ちし )して、家督相続をしてから十九年、母 岩田氏 ( いわたうじ ) 縫 ( ぬい )を 喪 ( うしな )ってから十二年、父を失ってから四年になっている。
5身を養ひて何事をか待つ。
⚑ ……もちろんその詳細な内容は遠からず貴方の眼の前に、 歴々 ( ありあり )と展開致して来る事と存じますから、ここには説明致しませぬが……」 「……エッ……エッ……そんな恐ろしい研究の内容が……僕の眼の前に……」 若林博士は、いとも荘重にうなずいた。
9私はキチガイなのだ。
⚒ (あんぶしゅうはん)• 初めて卵から 孵化 ( かえ )った 生物 ( いきもの )のように、息を詰めて眼ばかりパチパチさして、口の中でオズオズと舌を動かしていた。 わたくしどもはそれが帝国図書館の 保護 ( ほうご )を受けているのを、せめてもの 僥倖 ( ぎょうこう )としなくてはならない。
13(いちれんたくしょう)• 私がそのような佐々木吉三郎校長に 出会ったことは深い感謝である。
☕ 保証人にもならない。 ただ好劇家で劇場にはしばしば 出入 ( でいり )したが、それも同好の人々と一しょに 平土間 ( ひらどま )を買って行くことに 極 ( き )めていた。
15すなほならずして、拙きものは女なり。
⚠ 今まで一所懸命に張り詰めていた気もちが、尻餅を突くと同時に、みるみる弛んで来るに 連 ( つ )れて、何とも知れない 可笑 ( おか )しさが、腹の底からムクムクと湧き起り初めるのを、どうすることも出来なくなった。 とくに生まれた家の貧乏などは、何より大切な成功の素であると感謝すべきだ。
6塵より出でて塵に還る、 そは霊魂〔たましひ〕の謂〔いひ〕にはあらず。