🙏 P338 典侍 君し来ば手なれの駒に刈り飼はむさかり過ぎたる下 葉なりとも と言ふさま、こよなく色めきたり。 同じ大臣と聞こゆる中にも、お ぼえやむごとなくおはするが、宮腹にひとりいつきかしづき たまふ御心おごりいとこよなくて、すこしもおろかなるをば めざましと思ひきこえたまへるを、男君は、などかいとさし もと馴らはいたまふ、御心の隔てどもなるべし。
7いみじき武士 (もものふ) 、仇敵 (あたかたき) なりとも、見てはうちゑまれぬべきさまのし給へれば、えさし放ち給はず。
👉 こは名香など焼き給ふなめり• 八月十五夜、隈なき月影、ひま多かる板屋残りなく漏り来て、見ならひたまはぬ住まひのさまもめづらしきに、暁近くなりにけるなるべし、隣の家々、あやしき賤(しづ)の男の声々、目さまして、「あはれ、いと寒しや」「今年こそなりはひにも頼むところ少なく、田舎の通ひも思ひかけねば、いと心細けれ、北殿こそ、聞きたまふや」など、言ひかはすも聞こゆ。 ある時には大殿籠 (おほとのごも) りすぐして、やがてさぶらはせ給ひな ン ど、あながちにお前去らずもてなさせ給ひし程に、おのづから輕 (かろ) きかたにも見えしを、この御子 (みこ) うまれ給ひてのちは、いと心ことにおもほしおきてたれば、坊にも、ようせずば、この御子の居給ふべきな ン めりと一のみこの女御はおぼし疑へり。 (注) 1. 上記の源氏物語「桐壺」の本文は、吉澤義則著『對校 源氏物語新釋』巻一(平凡社、昭 和27年4月25日発行)によりました。
13日たけて、おのおの殿上に参りたまへり。
🐾 「いとどしく蟲のね繁きあさぢふに露おき添ふる雲の上人 かごとも聞えつべくなむ」といはせ給ふ。
8中将は、なかなかなる心地のかき 乱るやうなれば、まかでたまひぬ。
👆 これにつけても、憎み給ふ人々多かり。
15人に 普く知らせんとて家の門にこの女の頚にい抱きつきて後ろに立ち添ひたり• 月は入方 (いりがた) の空淸う澄みわたれるに、風いと涼しく吹きて、草叢の蟲の声々催しがほなるも、いと立ち離れにくき草のもとなり。
😍 かたはらいたきことなれば、まほにもえのた まはで、 源氏 「いかならむ世に、人づてならで聞こえさせむ」 とて、泣いたまふさまぞ心苦しき。 一方、夕顔の女は動かせど、身体は冷え行くばかり。
20七月にぞ后ゐたまふめりし。
😙 されば思ひわた さるるにやあらむ、いとよくこそおぼえたれ。 立ちながら帰りけむ人こそい とほしけれ。
20御 (み) 遊びの折々、こと笛のねに聞きかよひ、ほのかなる御聲を慰めにて、内裏住 (うちずみ) のみ好ましうおぼえ給ふ。
☣ 8. 「桐壺源氏」という言葉があって、広辞苑によれば、これは「源氏物語を読み始めたが 冒頭の「桐壺」でやめてしまうように、あきやすくて読書や勉強が長続きしないこと」を言 った言葉だそうです。 御 (み) 後見だちて仕うまつる右大辨の子のやうに思はせてゐて奉る。
5頭中将正下 の加階したまふ。